
北海道大学農学部/大学院農学院 森林政策学研究室
Forest Policy Laboratory
Department of Forest Science, Graduate School of Agriculture, Hokkaido University, Japan.
森林政策学研究室での研究
森林政策学研究室では森林と人間あるいは森林と社会に関係する幅広い研究テーマについて扱っています。森林政策学研究室でどのような研究をしているのか、特に森林政策学研究室への分属・進学を希望している学生さんに向けて、簡単に説明したいと思います。
大学入試では理系と文系という大きな区分があります。北海道大学でいうと、工学部や理学部は理系、法学部や経済学部などは文系ということになります。森林政策学研究室は「森林科学科」という8研究室からなる学科に所属しており、森林科学科自体も農学部という7学科からなる部局に所属しています。農学部が理系だとすると、その意味で森林政策学研究室は見かけ上も進路上も理系の枠内に収まっています。ただ、森林政策学研究室ではどちらかというと文系の研究を行っています。
社会全体に対して、理系(工学部や理学部など)と文系(法学部や経済学部など)が存在するように、森林に対しても樹木や森林の生理や生態を研究したり、木材の性質や利用方法を研究したりする理系分野があります。一方で、林業や森林保全に関わる法律や政策を研究したり、木材の流通や貿易を研究したりする文系分野もあります。森林政策学分野はこれらの文系分野の研究テーマの大部分を8研究室の中の1研究室でカバーしています。このようなことから、森林政策学研究室では森林に関係する幅広い研究テーマについて取り扱っています。過去の卒業論文や修士論文のテーマからも分かるように、直接森林や林業に関わりの薄いように見えるテーマ(例えば、野生動物や国立公園の管理、観光、地域振興、環境教育など)についても、森林政策学研究室では扱うべき研究テーマとしています。
森林政策学研究室では、これらの研究テーマを自分で見つけてもらうことに重きを置いています。これは森林と人間あるいは森林と社会との関係の中で「何を問題と捉えるか」が、とても重要であると考えているためです。このことは研究テーマを自由に選べるようで魅力的に聞こえるかもしれませんが、そう簡単でもありません。
見つけてもらった研究テーマ案の中には、研究としての問い(リサーチクエスチョンと言います)を設定することが難しかったり、すでに研究が行われていたりするものも少なくありません。熱帯林の伐採や砂漠化の問題、気候変動の問題は、現場が近くにないという意味でリサーチクエスチョンを設定することが難しい場合が多いと言えます(できない訳ではありません)。また、書籍やWEBサイトで知り得た知識に基づいて考えられた研究テーマ案については、すでに研究が行われている場合もあります。現場に出向いて研究テーマ案を探す場合でも、自分が問題だと考えていたことが実際には問題ではなかったり、自分が問題だと考えていたことよりも実はもっと重要な問題が存在していたりすることもあります。提案してもらった研究テーマ案がそのまま卒業論文や修士論文の研究テーマとなることはまれで、多くの学生さんが、興味のある様々なトピックスを広く検討し、先行研究を踏まえ、大変な思いをしながら研究テーマを設定することの方が多いと言えます。また、幅広い研究テーマがあるなかで、教員が本当の意味で専門的な指導をできるのは一部の研究テーマに限られています。教員は研究テーマの設定や研究手法の選択を学生さんとともに一緒に考えますが、基本的には研究は自分で進めていくことになります。その意味で、自立的に研究を進められてる学生さんが森林政策学研究室には向いていると言えます。
森林政策学研究室では、基本的にゼミ以外は出席を求めることがありません。自分で研究テーマを設定することが苦手であったり、自立的に研究を進めることが苦手な学生さんにとっては、「何が問題だと思うか?」「何を研究テーマにできると思うか?」「リサーチクエスチョンは何か?」と問われ続け、一方でどんな研究活動をすべきか具体的な内容が指示されない大変な研究室ということになります。一方、自分で研究テーマを設定でき、自立的に研究を進めることができる学生さんにとっては、教員からの干渉も少なく、自分の好きなことを好き勝手に進められる贅沢な研究室ということになります。森林政策学研究室への分属・進学を希望している学生さんにとって、その点が合うかどうかが一番重要なポイントになると思います。
森林政策学研究室の卒業生は様々な分野に就職され、それぞれの分野で活躍されています。森林や環境に関わる行政機関(林野庁や環境省、都道府県・市町村の森林・環境部局の職員)、森林や木材に関わる企業(住宅メーカーや製紙会社)に就職する学生さんが多いですが、それ以外の分野に就職する学生さんも数多くいます。留学したり、他大学の大学院に進学したり、学位を取って研究者になる学生さんもいます。皆さんそれぞれの分野で、森林政策学研究室での研究活動を活かし、森林と人間あるいは森林と社会に関わって具体的な貢献を行っています。森林政策学研究室への分属・進学を希望している学生さんにも、森林政策学研究室での研究活動を通じて、森林と人間あるいは森林と社会との接点を見出し、自分だけの貢献ができる力を身につけてもらえればと考えています。